キスの意味を知った日


聖なる夜に何やってんだって感じだけど、部屋に帰っても寂しいだけだし。

パーティーとかする年でもないし。

そして、キャラでもない。


だったら、私の居場所はここしかない。

年末休暇前に終わらせておきたい仕事もある事だし、ここいにる。

別に悲観しているわけでも、強がっているわけでもない。

元々、イベントだからと言って盛り上がる性格でもないし、何かしなきゃと使命感に駆られるタイプでもない。


きっと彼も同じ。

寂しいとかいう感情は無さそうだけど――。


そんな事を思いながら、カタカタとパソコンを打ち続ける。

暖房も切られたのか、そろそろ手がかじかんできたけど気にしない。

後で、温かいコーヒーでも買ってホッカイロ代わりにしよう。

櫻井さんにも帰ってもらって、1人ゆっくりと自分のペースで仕事しよう。

そう、思っていたのに。


「なぁ、松本」

「なんでしょうか」

「どっか飯でもいくか」

「へ?」

「クリスマスだし。今日くらい息抜きしろ」


そう言った櫻井さんの言葉に、目を見開く。

だって、クリスマスに一緒にご飯に行くなんて思いもしなかったから。
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