キスの意味を知った日
「今日はご馳走様でした」
「あぁ、風邪ひくなよ」
部屋に着くや否や、そう言って不敵に笑った櫻井さん。
そして、何の躊躇もなく鍵を開けて部屋に入ろうとした。
その姿を見て、胸にポッカリ穴が開く。
帰ってしまう。
どうしてか、物凄い喪失感に襲われて唇を噛み締めた。
すると、いつもならあっさり帰る私がドアの前でポツンと立っているもんだから、不思議に思ったんだろう櫻井さんが、玄関の扉を開ける手を止めた。
そして、振り返って首を傾げた。
「どうした」
まるで子供を宥める様にそう言われて、ゆっくり顔を上げる。
すると、そこには大きな瞳で私をじっと見つめる櫻井さんがいた。