キスの意味を知った日

「なんかあった?」


テーブルに頬杖をついて、優しく問いかけてくる美咲。

その姿に、水のように飲んでいた焼酎を置いた。


こういう時、やっぱり頼れるのは友達だなと思う。

だけど、櫻井さんとの事は言えない。

日向の事もあるし、どことなく後ろめたかった。


「私、恋から見放されてるのかも」

「珍しく弱気じゃん」

「違う、恨み」

「誰に」


そう言われて、天井を指す。

ポカンとする美咲に、神様とボソリと呟いた。

そんな私を見て、美咲は弾かれたようにゲラゲラ笑った。


「あんた神様とか信じるタチだっけ?」

「信じてるように見える?」

「全く見えない」


ハッキリそう言われて、当たりです、と思う。

私はそういう目に見えないものは基本信じない。
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