キスの意味を知った日
神様は信じてない。
でも、こういう時、八つ当たりできる相手がいるのは助かる。
神様に八つ当たりって、何様なんだよって感じだろうけど。
「恋なんて、慣れない事するもんじゃないね」
「慣れようとしてないだけでしょ」
相変わらず、適格な所をついてくる美咲に口を噤む。
どんな人間観察力してるんだろう。
むしろ、私自身より私の事を知ってそうだ。
そんな事を思っていると、呆れたように溜息を吐いた美咲が、残っていた枝豆を口に運びながら話し出した。
「まぁ、なんにせよ、恋なんてそんなうまい事運ぶものじゃないよ」
「――」
「人と人なんだからさ。それに年のせいにしたくないけど、年を重ねるごとに背負ってるモノって多くなるじゃん? 何かと」
「背負っているもの……」
「良しも悪しもね。今までの経験が素直にさせないっていうか。昔みたいに、ただ好きなだけで突っ走れないっていうか」
そう言って、またお酒を口に運んだ美咲。
その姿を追う様に、私もグラスを口元に運ぶ。