キスの意味を知った日

神様は信じてない。

でも、こういう時、八つ当たりできる相手がいるのは助かる。

神様に八つ当たりって、何様なんだよって感じだろうけど。


「恋なんて、慣れない事するもんじゃないね」

「慣れようとしてないだけでしょ」


相変わらず、適格な所をついてくる美咲に口を噤む。

どんな人間観察力してるんだろう。

むしろ、私自身より私の事を知ってそうだ。

そんな事を思っていると、呆れたように溜息を吐いた美咲が、残っていた枝豆を口に運びながら話し出した。


「まぁ、なんにせよ、恋なんてそんなうまい事運ぶものじゃないよ」

「――」

「人と人なんだからさ。それに年のせいにしたくないけど、年を重ねるごとに背負ってるモノって多くなるじゃん?  何かと」

「背負っているもの……」

「良しも悪しもね。今までの経験が素直にさせないっていうか。昔みたいに、ただ好きなだけで突っ走れないっていうか」


そう言って、またお酒を口に運んだ美咲。

その姿を追う様に、私もグラスを口元に運ぶ。
< 263 / 353 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop