キスの意味を知った日

その言葉を聞いて、ポカンと口を開けて固まる。

きっと、間抜けな顔をしていたんだろう。

私の顔を見て、純さんは声を殺して笑った。







「純さん、お医者さんだったんですね」


小さなカフェで運ばれてきたコーヒーに口をつける。

視線を前に向ければ、コーヒーにミルクを入れた純さんがクルクルとスプーンでそれを混ぜていた。


「意外だった?」

「いえ、世も末だなと思って」

「瑠香ちゃん、相変わらず当たり強い~」


こんな軽いノリの人が医者なんて、本当世も末だ。

私なら、絶対この人の診療を受けたくない。

だけど、医者という事はもちろん頭もいいという事になる。

今は馬鹿な事を言っているけど、本当はメチャクチャしっかりしている人なのかも。

なんだか、少しだけ純さんのイメージが変わった。



あれから、少しお茶しようと誘われて半ば強引にここに連れてこられた。

適当に断る事もできたけど、新しい担当の病院のご子息だ。

下手に断れない。


きっと、純さんも私が断れないのを知って誘ったとしか思えない。

そう思うと、やはり頭の回転は速いのかもしれない。
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