キスの意味を知った日

それでも、私の僅かな変化を見て、一気に好奇心に満ちた顔になった純さん。

コーヒーを飲む手を休めて、口角を少し上げた。


「同じ会社だったんだって？」

「偶然にも」

「駆も驚いてたよ、正直焦ったって」

「私も驚きました」


一瞬崩された心を一気に立て直す。

それでも含みのある笑みで私を見つめている純さん。

あの僅かな動揺１つで、きっと私の心を読んだんだろう。


この人頭がキレる。

そう感じた。


このままじゃマズイ。

そう感じて、さっさと席を外そうとした時。


「何か心境の変化があったみたいだね」

「なんの事でしょう」

「この前より、掴み所があるから」


その言葉に、威嚇するようにギロリと純さんを睨みつける。


私はこの人の掴み所が分からない。

一見軽そうなのに、急に真面目な顔になったり。

思いもしない言動に身構えている自分がいる。


優雅にコーヒーを飲む姿は育ちの良さがすぐに分かる。

かと思えば、無造作に足を組んだり。

一気に純さんが謎の人物になった。