キスの意味を知った日
「俺もその時は丁度関西にいたから知ってるけど、まぁ仕事に命かけてるような女だったな。気が強くて、負けず嫌いで、1人でも生きていけそうな、そんな女。駆もその節があったから、お似合いだなって思った」
「――」
「でも、完璧な人なんていない。特に恋が絡むとな。その彼女も駆が心を許してくれないって、愛してくれないって……そうやって、時間が経つにつれて、どんどん変わっていった」
その言葉に、苦い気持ちになる。
恋愛は人を変えてしまう。
その、人生すらも。
それは私も痛いほど分かっていた。
そして、その力を恐れていた。
変わってしまう自分が怖かった。
「結局彼女は鬱になって、仕事を辞めた。あんなに仕事に力を注いでいた彼女が。そして、駆に付きまとうようになった」
「付きまとう?」
「監視だな。アイツの行動全てを知っていなきゃ不安だって言って」
「――」
「異様な執着だった」
その言葉に、悲しくなる。
変わってしまったんだ、彼女も。
「駆はそれで、カナリ悩んだみたいだな。あんなに仕事が好きだった彼女を自分は変えてしまった。人生を壊してしまったってな」
「――もしかして」
その言葉に、その言葉が浮かぶ。
ハッとして純さんに視線を向けると、彼は少し悲しそうに笑った。
「そう。それからアイツは自分の人生から『恋』を切り捨てた」
そして、そう言った。