キスの意味を知った日

乱暴に吸いかけの煙草を灰皿に押し付けて、もう一度私を見つめた純さん。

その真っ直ぐな視線が私を射ぬく。

そして。


「合格」

「はい?」

「やっぱりいいね。その負けん気の強い所」


そう言って、張り詰めた空気を打破するように、アハハハと楽しそうに笑いだした純さんは、もはや狂っているのかと思ってしまうほど、謎だ。

その姿を訳が分からずポカンと見つめていたけど、徐々に腹が立ってきた。


「からかっているんですか」

「あ~ゴメンゴメン。そうじゃないんだ」

「だったらなんですか、合格って」

「いやね。ここで好きじゃないです、って言われたら、無理矢理でもお持ち帰りする所だったよ」

「――」

「俺が思ってた通りの子だね。芯が強い。あ、もしかして、誰にでもこんな人の過去をベラベラ喋る男だと思った?」

「……思ってました」

「だよね~。でもハズレ。俺は人を見る目はあると思ってる。瑠香ちゃんだから話したんだよ」

「それって、どういう……」

「自分の心に素直じゃないヤツは、人の心なんて動かせない」


真っ直ぐに言われたその言葉に、口を噤む。

そうした私を、再び純さんは不敵に笑って見つめた。
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