キスの意味を知った日
「助けてくださいっっ!!」
どこをどう走ったか分からない。
心臓が破裂しそうだけど、構っていられない。
無我夢中で走り続けて、見つけた警察署の中に勢いよく飛び込んだ瞬間、大声で叫んだ。
すると、中にいた警察官の人が目を見開いて立ち上がった。
「どうしたんですかっ!?」
「櫻井さんがっ――早くっ!! 助けてっ!!」
我を忘れて叫ぶ私に駆け寄ってきた警官が、私を落ち着かせようと肩に手を置く。
それでも、私の腕から流れる血を見て、目を見開いた。
「落ち着いてっ! 何があったんですかっ!?」
「ナイフを持った男がっ――さ、櫻井さんが殺されちゃう――早くっ――助けてくださいっ!! お願いっ!! 早くっ!!」
うまく言葉が落ちない。
早く助けて。
それだけが頭の中に溢れる。
泣き叫ぶ私の言葉に、現状を把握した警官が「どこですかっ!?」と叫んだ。
その言葉にまた弾かれる様にして、走り出した。
櫻井さん。
櫻井さん。
死なないで。