キスの意味を知った日

私の後ろを走る警官を確認しないまま、ただ我武者羅に走り続けた。

腕からポタポタと血が流れている。

肺が悲鳴を上げている。

それでも、そんな事どうだっていい。


早く。

早く。


しばらくして、見覚えのある公園が見えてきて大声で叫んだ。

今にも転びそうになる足を必死に前に出す。


「櫻井さんっ!! 櫻井さんっ!!」


どこっ!?

どこにいるのっ!?


何度も大声で彼の名前を呼びながら、キョロキョロと周りを見渡す。

すると、遠くの方で微かに声がした。

警官もその声に気付いたのか、私の側から風のように走り出した。

私も、必死でその後を追う。


櫻井さん。

どうか無事でいて。
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