キスの意味を知った日
病室には、私のすすり泣く声だけが響いた。
私は彼に、どう償えばいいんだろう。
もしかしたら私のせいで、櫻井さんを死なせる所だったかもしれない。
この顔の傷は、もしかしたら消えないかもしれない。
そう思うと、また体が小さく小刻みに震えだした。
ただただ、櫻井さんの手をぎゅっと握りしめた。
そんな時、握っていた櫻井さんの左手が微かに動いた。
その動きにハッとして、慌てて顔を上げる。
「櫻井……さん?」
顔を覗き込むと、少しだけ瞼が痙攣するように動いた。
その姿を見て、慌てて声を上げる。
「さ、櫻井さん。 櫻井さんっ!!」
起きて。
その思いで、必死に彼の名前を呼んだ。
もう一度、あなたの瞳に私を映して。
その声で、私の名前を呼んで――。
「駆っ!」