キスの意味を知った日

それから、地獄のような時間が何時間も続いた。

必死にメモを取って、新しい知識を頭に入れていく。

今にも倒れそうで座っているのも辛かったけど、あと少しだと何度も自分に言い聞かせた。






『――…それでは、これにて終了いたします』


待ちに待った一言が、ようやく告げられた。

やっと、終わった。

節々痛い。

一刻も早くベットに行きたい。

だけど、体が重くて動かない。


ぼんやりと出口に群がる人を見て、もう少ししてから行こうと決心する。

今はもう普通に歩く事もできないだろうから。


「お疲れ様」


ボーっと机に座る私を見て、横に座っていた櫻井さんがそう言う。

ゆっくりと視線を隣に向けると、資料をまとめてファイルの中に入れる櫻井さんがいた。


「よく頑張ったな。部屋まで行けるか?」

「……大丈夫です」


行ける自信はないけど行かなければ。

こんな所で倒れるわけにはいかない。
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