キスの意味を知った日


カタっという物音に目が覚めた。

頭が割れそうに痛い。

指1つ動かすのも、ダルイ。

瞳を動かすのも億劫だけど、ゆっくりと目を開けた。

すると。


「悪い。起こしたか」


突然声が鼓膜に響いて、動きを止める。

それでも、声のする方にゆっくりと首を動かすと、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出している櫻井さんが見えた。


その姿に一瞬思考回路が止まる。

それでも、必死に記憶を辿る。


覚えているのは研修会が終わって、櫻井さんに付き添われてエレベーターを降りた所まで。

そして、私が今いるのはベットの上。

――という事は。


「私、倒れたんですか?」

「正解」


私の質問にそう言って、蓋を開けたミネラルウォーターを少し上にあげた櫻井さん。

そして、飲む? とそれを私に向けた。

喉が酷く乾いていたので、いただきます。と言って体を起こしてそれを受け取り、口に流し込んだ。
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