キスの意味を知った日
ピンポーン。
一気に500mlの水を飲み干して息をついた時、突然チャイムが鳴った。
誰だろうと思いながら玄関の覗き穴を覗くと、そこには思ってもみなかった人物が立っていた。
「どしたの美咲」
玄関を開けて、そこに立つ人物に目を見開く。
そんな私を見て、美咲はニヤリと笑った。
「やっほ。風邪どう?」
「え? あぁ、少しは楽になったかなって感じ。っていうか、どうしたの? 仕事は?」
まだ6時だ。
こんな早くに仕事が終わるはずない。
頭に?マークが沢山ある私を横目に、入るね~。と玄関を通り過ぎる美咲。
勝手を知っているだけあって、スタスタとキッチンへ向かい、何やらスーパー袋に入った食材を冷蔵庫に詰め始めた。
その様子を隣で呆然と見つめる。
すると。
「櫻井さんに言われたの」
大量のリンゴを冷蔵庫の中に入れ終わった美咲が、唐突にそう言った。
その言葉に、本気で目を見開く。