キスの意味を知った日
それから、リビングで少し2人で喋った。
ゆっくり寝れた? と聞かれ、さっきの浦島太郎事件を話すと、信じらんない。と化け物を見る様な目で見られた。
そう言いながらも、少し話した後、美咲はテキパキと持ってきた材料で野菜スープを作ってくれた。
手伝う? と聞くと、般若の顔で、寝てろ! と言われたので、大人しくベットに潜り込んだ。
「それより意外だったなぁ~」
「何が?」
「櫻井さん。他人には干渉しない人だと思ってたのに」
そう言って、野菜スープを口にする美咲。
自信作だったのか、ガツガツと私の分まで食べて、鍋一杯に作ったはずが、もう底が見える。
私はチマチマとお粥とスープを飲みながら、美咲の話に耳を傾ける。
「私が部下だからじゃない?」
「だからそこが意外。仕事は仕事って割り切って、業務以外は干渉しない人かと思ってた」
「あ~……まぁ」
「それに初めて会った時なんて、恐ろしいくらい冷徹な男にしか見えなかったじゃない? この男、絶対自分以外の人間の事は信じないタチだろうなぁ~って思ってたもん」
「――正直、私も」
「絶対人間に興味ない人だって、思ってた」
悪気もなくそう言って、私を見つめる美咲。
相変わらず毒舌だ。
だけど、その意見には今回私も賛同する。
あの初対面のイメージが強すぎて、優しくされる度に違和感を覚える。