キスの意味を知った日

「――…いいよ」


いいよね? という同意を求める美咲の視線に答えるように、コクンと頷く。

大勢で飲むのは別に嫌いじゃない。

いろんな人間と関わるのは勉強になる。

もちろん、仕事のね。


急いで店員さんにテーブルをくっつけてもらう。

純と呼ばれた彼は、美咲の高校の先輩だとか。

その割りには、えらいフレンドリーだな。と思いつつも、口には出さない。


「で? そっちの美人は?」


いかにも軽そうな純が私の前に座って、ニタニタしている。

女慣れしていると思うのは、間違いではないだろう。


「私の同期で瑠香っていうの」

「ルカ……ね。よろしく」


久しぶりのこういう場に少しばかり緊張する。

それでも、全員お酒が入っているのが幸いで、めんどくさい自己紹介もスムーズに終わった。
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