キスの意味を知った日
櫻井さんが移動してきて、もう4ヵ月が経った。
今ではうちの課には、なくてはならない存在だ。
前の上司の遠藤さんも有能な人だったけど、なかなか大きな仕事は任せてもらえなかった。
信用されてなかった。とかそういうのではなくて、たぶん自分しか信じてない人だったのかもしれない。
でも櫻井さんは、どんどん新しい仕事を各社員に回してくれる。
一見、超ハードな仕事を回してくるな。と焦る事もあったけど、困ったなと思っていると、すかさずサポートをしてくれる。
でも、一番重要な所は自分でやれと背中を押してくれる。
私の好きなやり方だ。
人を上手く育てている。
新しい仕事が楽しくて没頭していると、いつの間にか終電が終わっていた。
というのは、最近よくある事だった。
でも体は不思議と疲れなかった。
1日が24時間では足りない。
もちろん、いい意味で。
そして例にならって、みんなが帰った後、資料室に籠って仕事をしていたら、櫻井さんに呼ばれた。
「おい、そろそろ切り上げろ」
その声にハッと現実に呼び戻され、ガサガサと散らばった資料を片付けた。