キスの意味を知った日
「着いたぞ」
相変わらず互いに言葉数少ないまま、マンションの地下駐車場に着く。
エンジンが止まったのを確認して、シートベルトを外した。
「ありがとうございました」
「ん」
エンジンを切った櫻井さんに、小さくお辞儀をしてそう言う。
そんな私の姿を横目に見つつ、スタスタと車を降りて、その脇を通って行く。
そんな彼の後ろを歩きながら、エレベーター横にある郵便ポストを確認する。
だいたいはお店のDMか、電気料金の請求書だったりだ。
だけど、その中にふと見慣れない封筒が目に付いた。
真っ白の封筒に、私の名前が書いてあるだけ。
切手も貼ってない。
なんだろう?
誰から宛とも書いていない。
不思議に思いながらも、櫻井さんと一緒にエレベーターに乗り込む。
その間も、何度もその封筒を裏返したりしていると。
「何、郵便?」
そんな私の姿を見て、櫻井さんが視線だけ私に向けて素っ気無くそう言った。
その言葉に、隣に視線を向ける事なく頷いた。
「はい。でも、私の名前しか書いてなくて。住所とか切手も貼ってないんです」
結婚式の招待状とかかな?
直接うちのマンションの郵便入れに入れたって事?
でも、最近結婚する人いたっけ?
不思議に思いながらも、待ちきれずビリビリとその封筒を開けた。