地方見聞録~人魚伝説譚~






「お前さんも、よくもまあ飽きないのう」





 独特な雰囲気を持った老女は、柔らかな笑み。村の長であるエノヒである。今日も子供達の世話をしつつ、エノヒのもとへ来ていた。

 子供達はエノヒが語る話が好きであり、学びの場とも言えた。






「そうですか?」

「お主といい、リンといい、誰か良い人でもいれば良いのだが」

「……エノヒ様」






 この村の長であるエノヒは親しみやすく、人々からの信頼もある人だ。
 幼い頃に母を、数年前に父を亡くした私にとっては母でもあり父でもある。いわば親のような存在だった。




 リンも私も"年頃"の娘である。自分で"年頃"だなんて言うのもおかしい気がするが――――私はともかく、リンならばいくらでも相手が見つかりそうだと私は思っていた。




 料理の腕も、家事も得意、美人で優しい子。

 去年夏に隣の村の祭にでかけたら、男の子の視線を集めていたのを覚えている。




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