地方見聞録~人魚伝説譚~
2章
静かな部屋。
そこには机が並び、子供たちが本を手に声を出す。一人一人読ませていくその光景は、都でいう"学校"と同じである。
広い部屋を行き来しているなは、セインの兄オルハだった。長い髪をゆったりと束ね、片手に本をひろげている。
オルハは学問をするべく、都心へ出ていただけのことがあり、そのまま子供たちの先生をしている。
洗ったばかりの服を干しながら、私は子供たちの声を聞いていた。
時折「こら、よそ見はいけませんよ」というオルハの声に、小さく笑みがこぼれる。
「リン――――って」
「残念でした」
「なんだお前か」