地方見聞録~人魚伝説譚~
奥から顔を覗かせたのはセインだった。私をリンだと思ったらしい。にやりと笑ってやった。
「リンは畑のほうよ」
とっととくっつけば良いものを。
本音を言うとそうなのだが、一方の本人らはあまり進展はなく、無意識にのろけてみせているのがなんともまあ、見ているこっちが照れてしまう。
セインはばつの悪そうな顔をした。
「今日、漁に出るから」
「ふうん。リンに言いに行かなくていいの?」
「……うるさい」
顔を赤くさせる"幼なじみ"が可愛らしく見えた。
どうせ今から言いに行くんだろう。
こちらに背を向けたセインに「気をつけて」と言葉を投げた。
* * *