地方見聞録~人魚伝説譚~
靴をほうり投げ、砂の上を少し走る。そして「冷たっ」
足を海につけ、リンと私は一緒にいた。叩け仕事を終えたリンが私のもとにやってきたのだ。
「どうしたの」
急に立ち止まったリンに、私も足を止めた。波が押し寄せ足を濡らしていく。
リンは海のずっと向こうを見ているようだ。
「セインは、私のことをどう思ってるのかなって」
「何をいまさら」
「だって何も言ってくれないんだもの」
オルハとは違い、セインは男らしい若者といえる。しかも口数が多いわけでもなく、異性ならばリンか、私くらいしかよく話さない。