地方見聞録~人魚伝説譚~
こちらから見れば完全な"許婚"だろう。
だが肝心のオルハが決めない。二人の約束がなければ許婚だと公言出来ない。
少し前、この村から嫁いでいった子がいる。歳はリンより一つ下だった。幼妻だとその子を娶った青年は言われて照れていた。
それを見たリンは複雑なのだろう。
「私から言ってやろうと思ったけど、何だか怖くて」
今まで通りなんて。
リンが考える予想は、ありえない。わかっている。でも不安にさせるセインもセインだ。リンを不安にさせるなんて。
目をふせるリンの横顔は、恋に悩む乙女だ。
恋をすればこんなに変わるものなのだろうか。
「レト?」