地方見聞録~人魚伝説譚~
新たに持ってきた亡き父の着物を纏ったヨウは、己が知ることを話すかわりに、私にもこの場所のことなどを聞いた。
この地域には人魚は姿を見せないことに関しては、「……本当か?」と眉をひそめた。
「古い話は残ってるんだけど……」
「古い?」
――――人間と、人魚が夫婦となる話。
私がいくつかある"昔話"の中でも好きな話。ヨウは黙って聞いていたがやがて「本当なのだな」と呟く。
私が住む地域では、人魚が昔話となるほど、彼らは姿を見せていない。
リンから他では見かけるということを知った時、酷く驚いたし、また淋しくもあった。
そのことを確かめるようにヨウに聞けば、彼は頷いた。