地方見聞録~人魚伝説譚~
運良く助かったのは良いが、とヨウは続ける「土地勘が全くない」
見ず知らずの土地。
ヨウは体勢をあらため、私を見遣る。
「しばらくここにいさせてくれないか」
答えは決まっていた。
幸い、村の中にある自宅も部屋はあるし、ここの小屋だってある。いくらいても私は構わない。
「私は構わないよ。でも……村の長に言っておいたほうが良いかも知れない」
「そう、だな」
少々浮かない顔をしているヨウに「悪いようにはならないと思うよ」という。
エノヒ様なら心よく許すだろう。
「よろしく頼む」
真剣な顔でそう言うヨウに、私も強く頷いた。
* * *