地方見聞録~人魚伝説譚~
ヨウはわざとやったのだろう。多分――――見せてくれたのだ。
「すごく、綺麗だった」
しゃがみ込んでそう言うと、何故か驚いたような顔をされた。
「あまり言われたことがないな」
「何か……みんな人魚って美形じゃないのかしら」
そう思ってしまう。なんせあんなにヨウが綺麗だったから。
本音を漏らせば「見た目は良いほうなのだろう」と。ものすごく羨ましくてならない。
その艶のある黒髪も、紅をひいたような唇も、美人としか言いようがない。低い声もすっと耳に染み込むようだった。