地方見聞録~人魚伝説譚~
「同業者がそれを狙ったことはあった。村一つ荒らすつもりの奴らも。だが村に上陸する前に船ごと海に沈んだり、陸では姿を消していく」
「呪われし土地」
「ああ。その地域に害をなす者を拒絶している。その原因があの村の秘宝だ」
「確か、人魚が置いてったとかいう……?」
声には恐れがあった。
馬鹿やろう、と声をあげたゼクトにブラギが縮み上がる。こんなことで怯えるなんて。ヘズは密かに腹の中で笑った。
「だからこそ」
それは笑み。
「かなりの価値となっている。女はともかく、それだけでも十分な程、な」
"いわくつき"の分類に入るのかもしれない。だが、"同業者"の中では高い値がついていることを、ヘズも知っている。
しかし――――どうするつもりなのか。
頭であるゼクトを見れば顎に手をそえて、何か考えていた様子でいたがやがて、にたり、と笑った。
* * *