地方見聞録~人魚伝説譚~
同族の中では、ヒトを嫌う者もいる。わからなくもない。
人魚をさらうのはヒトだ。だが全てを否定できない。ヒトも我らも共に生活してきたのだ。
ゆえにこの地域で人魚を見ないというのには、些かひっかかった。
似たようなことを知っているのだ。
知っているというよりは――――。
ふと見れば、まだリンやセインをからかいつつも、嬉しさを滲み出しているレトの姿がある。
セインは顔を赤く染めているものの、やはり嬉しいのだろう。いつ結婚を? とにやついたレトの言葉にリンが今度は困っている。
見ていてほほえましかった。