地方見聞録~人魚伝説譚~






 十分だ。






 はるか昔、己の先祖が愛していたであろう地。

 深い悲しみによって、まるで呪われているようだとまで言われる地。それを――――変える。


 人魚の娘が愛したのは、人魚の青年である。しかし青年は、同じ人魚に命を絶たれた。人間を愛しながらも憎む、その気持ちはいかほどであっただろう。



 思えば、私には人間の血も混ざっている。

 青年と結ばれた人魚は海へと戻ったが、青年との子を宿していたのだから。





「一日、私にくれ」





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