地方見聞録~人魚伝説譚~
話しをつけに行くまえに、レトに話さなくてはならない。
わかったと頷いたハレンに、もう一つ私は頼んだ。それは杞憂なのかも知れない。だが、万が一のために。
「今まで言い寄る子みんなふってたくせに。きっと泣いて悔しがるだろうね」
「……ハレン」
「我が友の頼み、しかと承知した」
互いに頷きあう。
―――もうすぐだ。
もうすぐこの地域にも人魚が姿を見せるようになる。
レト。
君が、私のことをどう思っているのか。深く聞くのが少し怖い。
君は人間だ。人魚じゃない。けれどどうか、どうか、伝わるように。
君への思いが本物であるということが、君に伝わるように――――。
* * *