地方見聞録~人魚伝説譚~
5章
「上手くいくんですかね、本当に」
商人の一人が、再び商品を並べ直してそう漏らす。聞かれたもう一方の商人は、声を出した男を小突いた。おおっぴらに殴れないからである。
「何弱気になってんだよ」
「だってよお」
ヘズはげんなりとする。
この男、ブラギは迷信やら呪いやらのたぐいは苦手らしい。そのくせに"こんなこと"をしていてもケロッとしているのだ。
迷信やら呪いやらより怖いのは人間だろうが。そう思うヘズは、商品を適当に売りながら見ていたのだが「見たか?」
「へっ?」