地方見聞録~人魚伝説譚~





 急に声をあげたブラギに「何だ」と返す。ブラギが顎先で示す先には、一人の女がいた。
 女たちの中に混ざっていた女だが……。

 なぜ印象に残っているかというと、べつにものすごく上玉という訳で目についたわけではない。そう、あれは……。

 "あの"人魚 が声をかけ呼んだ女だった。




「おいおいまじかよ」




 おもわずヘズが興奮気味に声を発した理由がその女にあった。その女が、友人であろう女に見せたのは――――――。


 首から下げられた、玉。


 運でもまわってきたか?
 表情が緩むのをヘズは感じた。





  * * *





< 73 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop