地方見聞録~人魚伝説譚~
急に声をあげたブラギに「何だ」と返す。ブラギが顎先で示す先には、一人の女がいた。
女たちの中に混ざっていた女だが……。
なぜ印象に残っているかというと、べつにものすごく上玉という訳で目についたわけではない。そう、あれは……。
"あの"人魚 が声をかけ呼んだ女だった。
「おいおいまじかよ」
おもわずヘズが興奮気味に声を発した理由がその女にあった。その女が、友人であろう女に見せたのは――――――。
首から下げられた、玉。
運でもまわってきたか?
表情が緩むのをヘズは感じた。
* * *