地方見聞録~人魚伝説譚~
お前にもやるよ、と渡されたのは焼き菓子。リンが作ったとうっすら照れながら言う様子を見て、相変わらずだなと思った。
夫婦にいずれなるだろうが、見ているこっちが照れてしまう。早く婚礼をしてしまえばいいのに。
焼き菓子を食べながら、セインは口を開く。
「あいつ、この地域で昔のように人と人魚が共に生活できる日を見てみたいって言ったらしい」
「ヨウが?」
「ばあちゃんから聞いた」
いつしていたのだろう。
思い出そうとしたのをセインは遮るようにして続ける「少なくても」
「"向こう"に話しをつけに行かなくてはならないって。だからそんな顔すんな」