地方見聞録~人魚伝説譚~
ヨウは必ず戻ると言った。戻ってくる。何故。
人間と人魚が共に生きる日。それが叶わなくなってもう随分たつ。ヨウはこの辺りの海をあまり良くないと言っていた。そして―――悲しいと。
昔話で残る、青年と人魚の話。あれはもしかしたら"本当"なのかも知れない。心の中で疑っていた。その昔話に出てくる宝玉は確かに村にあるのだけれど。
長い間昔話となっていたのだ。
海が深い悲しみでつつまれているだなんて。
ヨウはどんな気持ちで過ごしていたのだろう。
その日の夜。
久しぶりに自分の家はなんとなく居づらくなった。しばらくヨウがここで寝泊まりをしていたのだ。そのヨウは今頃、海の何処かにいる。