地方見聞録~人魚伝説譚~
「目ぇ離すなよ。わかってるな?」
お頭――――ゼクトは今度こそヘマしたら容赦なく始末するだろう。ヘズもブラギもわかっていた。
だからこそ、なるべく大きな利益にしたい。それに時間もないのだ。
女は海辺の方へ出て、また更に進む。
ヘズもブラギも感ずかれないようにしながら、女の後を追い掛けていく。
そして「止まった!」とブラギが言うとおり、女は岩場で進むのをやめた。
不安定な足場なのだろう。足取りがふらついていた。
「お前は向こうから行け」
「わかった」