わたくし、政略結婚いたします!?

「信じてないって顔だね。でも、覚えてなくても仕方ないよ。最後に会ったのはもう10年も前の話だから」


「10年前……」



まだお父さんが生きていたころ。


何不自由なく、恵まれた生活をしていたころだ。


記憶はかなり曖昧で、断片的なものしか残っていない。


そんな微かな記憶の中に、私が知る限りウィルやレナルドはいなかった。



「僕やレナルドは君より少し年上だからね。あの頃、僕もまだ12歳の子供だったけれど……。僕は、まだ幼かった君をしっかり覚えているよ」


「……私は、知らないわ」


「あの頃の君は、とてもよく笑う子だった。時々君の屋敷に遊びに行くと、僕やレナルドにとてもよく懐いてくれたよ。本当の兄妹のように慕ってくれた」



小さい頃。


確かにたくさんの人が家に来ていた覚えはあるけれど……。


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