わたくし、政略結婚いたします!?
「君のお父さんが亡くなる少し前かな。養子に出されたんだよ、今の家に」
「養子……」
「そう。……父は、次男であるレナルドじゃなくて、長男の僕を手放した」
ウィルは穏やかな表情のままだった。
だけど、彼の言葉には、優しさなんて感じられなくて。
少しも温度がない。
彼の言葉は、私の心に熱もなく溶けていく。
「……父が後継者に選んだのは、僕じゃなくて、レナルドだったんだよ」
相変わらず優しげな声。
「今更父を恨む気はない。養子に出された叔父の家もそれなりに裕福だしね。レナルドも父の期待に立派に応えていることだし。自慢の弟だよ」
「……」
穏やかな表情で。
優し気な声で。
まるで熱のない言葉。
淡々と語るウィルが、怖いと思った。
まるで本心の見えない彼が、どうしてか、怖かった。