わたくし、政略結婚いたします!?
レナルドの部屋を出て、私はドアの前で自分の頬に掌を当てた。
……レナルドの手は、私とは違う、骨ばった、だけど温かくて大きな手だった。
あの手を、なんだか知っている気がして。
あんなに優しく触れられたことなどないはずなのに、触られたのが初めてじゃないような気がした。
……昨日見た夢のせいかしら……。
具体的な内容は覚えていないけど、とても温かい夢だったことだけはぼんやりと覚えている。
ここ最近、慣れない生活で精神的に疲れていて、あんなに温かい気持ちになれたのは久しぶりだった。
夢でも、嬉しい。
「アリア様ーっ」
ふいに呼ばれて声のした方を見ると、メグが駆け寄ってくるところだった。
あんなに走って、メイド頭に見つかったら怒られること間違いなしだ。