Fairy And Rose
「…フリージア…?」
フリージアの儚い表情に、アトールは違和感を覚える。
しかし、信じて疑わないその瞳が
フリージアの心の奥を覗く事はない。
───そんな時。
黒い森がざわめいた。
「・・───ハンター!?」
フリージアの顔色が変わった。
警戒するように、目つきが鋭くなる。
周囲がざわめく。
黒い森が危険を予兆する。
警鐘がフリージアの心拍数を増やした。
フリージアは羽を羽ばたかせ、高く飛ぶと黒い木々の向こうに見える人間をその目に捉える。
「……来るわ。こっちへ」
嫌そうな声でそう言うと、フリージアは花畑へと降り立ってアトールを黒い木々の中へ押しやった。
「どうしたのフリージア!?」
「静かに隠れていなさい。
この外套を被れば、暗さに紛れてバレやしないわ」
「フリージア?」
「前にも教えたわよね、ハンターに捕まったら最後よって。
ハンターがすぐそこまで来てるの。
貴方は白蛇の化身…捕まったらどうなるか!」
人間でも、二人といない“白蛇の化身”がハンターの餌食にでもなれば「災いを呼ぶ」という言い伝えから、監獄に永遠に入れられかねない。
───そんな事、私がさせやしないわ
フリージアの目に力が宿る。
その目は、アトールの為と燃えていた。
「…だから、お願い。隠れていて」
「フリージアは!?一緒に隠れて…」
フリージアは黒い木々に紛れ、飛んでいった。
ハンターのいる方へと。
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