Fairy And Rose


赤、青、白、ピンク、オレンジ、黄色。

ここには色取り取りの花々が咲き誇り、色取り取りの蝶が鱗粉を振りまいている。


しかし、空は黒く高い木の葉で隠れ
遠くはどこまでも黒い木ばかりが続いていた。





───私はこの薄暗い花畑に

いつまで一人でいるのかしら。





小さな妖精は背中の透明な羽を羽ばたかせて、自分より一回り大きな黄色いパンジーの上に寝転がる。



「待てば誰か来るかしら?
なら私はあとどのくらい待てばいいのかしら?」






妖精はその白く細い腕を伸ばし、蝶に触れた。







───私は大層長い時間、ここにいる気がする。

一人は退屈。
一人は寂しい。
独りは嫌いだわ






慣れた手つきで蝶をからかう。

しかし蝶は話し相手にはなってくれない。
つまらないこと、この上なかった。




「…あら!」



どこまでも続く木々の中を、誰かが歩いて来る。

妖精は目を輝かせた。




パンジーから勢いよく飛び立ち、高いところからその"誰か"を見つめる。


近づけば、人間の雄だとわかった。


白髪に赤い目、背はちょうど百合の花の丈。

人間の子供だ。



「嗚呼…待っていたわ。
…ええ!待っていたの」




妖精は人間の目の前まで飛んでいった。



「嬉しい…!
ずっと、ずっと待っていたの」


「…僕を?」


人間は濡れた赤い目を妖精へと向ける。


「僕を、待っていてくれたの…?」



濡れた赤い目から、涙と喜びが垂れる。
人間は喜びに包まれた表情だった。




「…ええ!」



妖精の顔の上に、虚像の仮面がかかる。
にったりとした笑顔の仮面が。




「…そうよ、貴方を」









これが、人間と妖精の出会いであった。







< 2 / 23 >

この作品をシェア

pagetop