Fairy And Rose
赤、青、白、ピンク、オレンジ、黄色。
ここには色取り取りの花々が咲き誇り、色取り取りの蝶が鱗粉を振りまいている。
しかし、空は黒く高い木の葉で隠れ
遠くはどこまでも黒い木ばかりが続いていた。
───私はこの薄暗い花畑に
いつまで一人でいるのかしら。
小さな妖精は背中の透明な羽を羽ばたかせて、自分より一回り大きな黄色いパンジーの上に寝転がる。
「待てば誰か来るかしら?
なら私はあとどのくらい待てばいいのかしら?」
妖精はその白く細い腕を伸ばし、蝶に触れた。
───私は大層長い時間、ここにいる気がする。
一人は退屈。
一人は寂しい。
独りは嫌いだわ
慣れた手つきで蝶をからかう。
しかし蝶は話し相手にはなってくれない。
つまらないこと、この上なかった。
「…あら!」
どこまでも続く木々の中を、誰かが歩いて来る。
妖精は目を輝かせた。
パンジーから勢いよく飛び立ち、高いところからその"誰か"を見つめる。
近づけば、人間の雄だとわかった。
白髪に赤い目、背はちょうど百合の花の丈。
人間の子供だ。
「嗚呼…待っていたわ。
…ええ!待っていたの」
妖精は人間の目の前まで飛んでいった。
「嬉しい…!
ずっと、ずっと待っていたの」
「…僕を?」
人間は濡れた赤い目を妖精へと向ける。
「僕を、待っていてくれたの…?」
濡れた赤い目から、涙と喜びが垂れる。
人間は喜びに包まれた表情だった。
「…ええ!」
妖精の顔の上に、虚像の仮面がかかる。
にったりとした笑顔の仮面が。
「…そうよ、貴方を」
これが、人間と妖精の出会いであった。