Fairy And Rose
「アトール、アトールどこ?」
それはアトールが花畑に現れてから数日が過ぎようとしていた、ある日の事だった。
フリージアが少し目を離した隙に、アトールの姿が見えなくなったのだ。
「せっかくアトールの為にこれを作ったのに。困ったわ」
フリージアの手には、花と蝶の繭で出来た白い外套が握られていた。
小さな手で編んだきめ細かなそれは、光沢があり銀色に照っている。
「ねぇアトール、どこなの?
…私、貴方の為に頑張ったのよ」
花畑を見渡すも有るのは朽ちゆく事のない、いつも通りの花達と
どこまでも続く黒い木々。
「…?アトール…っ」
フリージアは外套を放し、急いで空へと羽ばたいた。
花畑の隅から隅まで探し回るが、アトールの姿は見つからない。
「意地悪していないで、出てきてちょうだい。お願いよ」
どんなに花畑を探してもアトールはいない。
フリージアの顔には焦りと不安が現れた。
「ねぇ、アトール!アトールったら!」
フリージアは不安で不安で、心細くなる。
もう独りが怖くて、嫌で仕方が無いのに
アトールがこの花畑にいないのだ。
「私を…独りにしないでよ」
フリージアは唇を噛んだ。