Sion

強い彼女





はぁはぁと息を上げながら、希愛は走る。
肺が苦しい。酸素を求めて、呼吸を繰り返すけど、全然満たされない。




苦しさに耐えられなくなって、その場に座り込んだ。
咳きと肺の苦しさに思わず涙がでてきた。




小さく丸まった背中に大きな手が当てられる。
『大丈夫?』と心配した声が希愛にかけられた。




顔をゆっくりと上げると、とても綺麗な女の子が心配そうに顔をのぞき込ませていた。




「…辛いの?」




日に焼けた長い指が希愛の手に触れる。
その指から感じる体温がとても温かかった。




『大丈夫』
そう言いたいのにこの唇から音を紡ぐことはできなくて。
何も言えずにいる希愛を心配そうに見る女の子に申し訳なかった。




なのに、女の子は絶えず希愛に声をかけてくれた。




「…苦しい?歩ける?」




希愛はコクりと頷いた。
女の子の細い腕に掴まり、ゆっくりと身体を立たせた。




身体が立ち、少しほっとする。
さっきよりも軽くなった身体に気持ちは落ち着いた。




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