Sion
こうなりたいとは思わない。
なれるわけないのだから。
でも…憧れてしまう。
こんな強い心を持てたらって…。
希愛が優愛を見ていると、優愛の視線とぶつかる。
優愛はふっと微笑み、口にストローを銜えた。
「憧れちゃダメよ。私みたいになったら…いいことない」
『でも…憧れます。優愛さんの彼氏さんが…羨ましいです、優愛さんに愛されていて』
そう言うと、優愛の顔が少し曇ったような気がした。
首をかしげると、優愛は溜め息に似た息を吐く。
「…彼氏…っていうか…私が無理やり押したの。どうしても付き合いたかった。彼の…音に引き込まれて…
私の音を弾いて欲しくて…気づいたら…アタックしてた」
『彼氏さん…音楽しているのですか?』
「えぇ。作曲家で…たまにピアノを弾いてくれる。でも、表に出たがらないの。
私は…まだ有名じゃないけど…絶対彼の音で売れるわ。言ってなかったけど…私も音楽関係の仕事してるの。
歌手なんだけど…知らないわよね?」
『ごめんなさい』と希愛は頭を下げた。