Sion
出るのはため息と涙だけ。
律花と那由汰が二人っきりだったのがショックなのではない。
確かに見たときは不安になった。
悲しくて切なくて…
どうして?と律花に問いたかった。
でも、それよりも希愛の心を占めていたのは…
『『奏 那由汰』って言うんだけど…知ってる?』
道でたまたま出会った優愛の言葉だった。
目の前が真っ暗になった希愛は急に気分が悪くなった。
優愛に謝り、その場を後にした。
優愛は最後まで心配してくれた。
『気を付けてね。何もなかったら送ってくんだけど…これから仕事があって…』
強くて…優しい。
優愛が…那由汰の彼女
知らなかった、彼女がいるなんて。
『傍にいる』『支える』そう言ってたのに…
その言葉は那由汰にとって『ただの友達』に対する言葉だったなんて…。