Sion
希愛はぎゅっと目をつぶる。
考えたくない光景が目に浮かびそうになった。
優愛と那由汰が一緒にいる姿なんて…
どうしてこんなにも自分は妬いているんだろう。
どうしてこんなにも自分は悲しみを抱いているんだろう。
こんなことはなかった。
爽の時にも感じなかった気持ちが希愛の胸の中にある。
こんなとき、誰に相談すればいいんだろう。
爽はいない。姉のように接してくれた理緒はまだ許してくれない。
律花にも相談できない。
希愛が距離を置いてしまっているから。
わがままなのかもしれない、自分は。
自分の都合のいいときだけ誰かに縋りたいだなんて…。
どうすればいいかわからない感情を抱きながら、希愛は身体を丸めてベッドで眠った。
その目から一粒の涙が流れていた―――。