Sion
自分勝手でわがまま
それでも希愛は勇気がないのだ。
大切な人だからこそ、嫌われたくない。
その人の心に触れづらい。
心を知ったとき、傷つくのは嫌だった。
「希愛ッ!」
聞こえるはずの声が聞こえ、希愛はぱっと顔を上げる。
窓の方を見て、目を丸めた。
そこには帰ったはずの律花が窓枠に足を置いて、こちらを見下ろしていた。
どうして…?
声がでないはずの唇が無意識のうちに動く。
律花は靴を脱ぎ、右手で靴を掴んだ。
そして、ひょいっと希愛の部屋の床へと着地した。
「どうしてって…希愛が会ってくれないからだよ?」
『ここ…二階なのに…』
「隣の人のベランダに上がらしてもらったの」
律花の行動は予想外だった。
希愛の目の前に律花がいる。