Sion




律花はクッションを抱きながら、希愛が話し出すのを待つ。
しんっとした空気だったが、明らかにさっきとは違う。




律花がいることで張り詰めていたような心が柔らかくなっていることに希愛は気づいた。
すぅっと息を吸い、ゆっくりと手を動かす。




『一週間前…律花…奏くんと音楽室にいたよね?』




何から話そうか迷った。
けど、はじめに聞きたかったのはこれだった。




『何…話していたの…?』




希愛は律花のことを信じている。
信じているから、どうしても聞きたかった。




律花ははぁーっとため息をついた。




「…知ってたんだ」




『ごめんね?音楽室に行ったら…二人を見ちゃったの』




偶然だった。希愛自身も驚いた。
律花は那由汰のことが嫌いで、二人きりになるとは思ってなかったから。




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