Sion
希愛は真っ直ぐ前を向いた。
その目には決意が浮かんでいた。
『律花…ありがとう。私…ちゃんと伝えるから…』
背中を押してくれる、律花のためにも。
未来を守ってくれた、爽のためにも。
今の自分の気持ちを、那由汰に伝える―――。
『でも、もし…無理だったら…』
「その時はあたしが傍にいてあげる」
やっぱり…律花は優しいね。
そんな優しい律花だからこそ…
『私も…律花に辛いことがあったとき、誰よりも傍にいるからね?』
「…今から行きな。あいつ、まだ学校にいるはずだから」
律花の言葉に頷き、私服のまま部屋を飛び出した。
希愛を見送ったあと、律花は一人でため息をついた。
「…強くなったね、希愛。あたしよりも…」
ずっと傍にいた。
ずっと支えていた。
そんな存在が一人で前へ飛び立とうとする。
少し悲しい気持ちを抱きながら、律花は希愛が帰るのを待った。