Sion
もしかしたら、希愛は自分自身で声を閉ざしていたのかもしれない。
自分で気づかないうちに爽に対する懺悔を声に変えていたのかもしれない。
「…希愛、体調は大丈夫?」
だとしたら…
希愛は那由汰を見る。
もしかしたら…この気持ちを声に出せるかもしれない。
伝えたくて、伝えたくてたまらない想い。
「…希愛?」
那由汰は不思議そうに希愛を見る。
希愛は戸惑いながらもゆっくりと那由汰に近づいた。
声を出そうとして、喉に力を込めた。
けれど、出たのは咳きだけだった。
コホコホッと掠れた咳きが出る。
そんな希愛を那由汰は心配そうに見つめた。
「…大丈夫?」
こくこくっと希愛は首を縦に動かす。