Sion
メロディーが流れる。
那由汰への想いが自然に溢れてくる。
泣きそうで、泣きたくて。
伝えたくて、伝わらない。
ただこの想いが音に変わればいいのに―――。
そう願っても、願い通りにはならない。
この想いは声に変えなければ伝えられないのだから。
自然に溢れる那由汰への想い。
「…す……き……」
気づけば声が那由汰に伝えていた。
ピアノの音が止まる。
驚いた顔の那由汰が希愛の顔をのぞきこんでいた。
「…今…なんて…」
希愛は今度は那由汰の顔をじっと見つめる。
赤くなって恥ずかしい顔に笑みを浮かばせながら…
「奏…くんの…こ…と、好き…で…す」
ずっと閉じていた声を一生懸命絞りながら。